今回は、コーナン商事株式会社を分析してみました。ホームセンター(以下、HC)事業を営む会社で、売上高は業界第4位、大阪に本社があります。HCはSPLENDID21NEWSで取り上げるのは初めてです。デフレの波にもまれ、同業他社と激しく戦っている業界です。
2010~2014年2月期までの5年間を分析してみました。
企業力総合評価は、101.03P→111.10P→114.94P→114.87P→106.48Pと推移しています。青信号領域をギリギリと言った感じです。2014年の失速が気になりますね。
営業効率(儲かるか)は、2011~2012年に改善しましたがその後失速しました。
資本効率(株主評価)も、営業効率と同じトレンドで推移しています。
生産効率(人の利用度)は青信号領域を緩やかな悪化トレンドで推移しています。
資産効率(資産の利用度)は悪化トレンドです。2014年には赤青ゼロ判別上にプロットしています。
流動性(短期資金繰り)は、5期連続赤信号領域にあり、改善トレンドです。
安全性(長期資金繰り)は、改善トレンドですが、2014年失速しました。
『規模の拡大を志向している会社』のパターンの1つとして、このような親指標の動きがみられます。
営業効率の下位指標を見てみましょう。
売上高総利益率は4年で3.70%も改善しましたが、販売費一般管理費率は、-4.21%悪化しました。
売上高の推移を見てみると、減収トレンドです。先ほど「『規模の拡大を志向している会社』と書いてあったじゃない!」とお叱りの言葉が聞こえてきそうです。その説明は後にいたしましょう。
売上が上がり難い状況の中、利益の元である売上高総利益率の改善を志向していることが見て取れます。
儲かる商品の売れるしくみを構築し、それに成功した会社なのです。
以下にHC業界で売上高経常利益率上位7社を示します。各社、他事業もしていますから、HC事業のみの売上高総利益率も調べてみました。コーナン商事のHC事業の売上高総利益率は突出しています。同業他社と比較して満足水準を決めていれば、2位のコメリと4.48%も差をつけることは出来なかった筈です。なぜ、これほどまでに高利益率を目指したのでしょうか。
答えの一つに先ほどの『規模の拡大を志向している会社』が考えられます。
強気に出店しており、従業員数も増え『規模の拡大を志向している会社』であることが分かります。設備投資で、有形固定資産30,855百万円増加、資金調達で借入金・社債3,825百万円増加しています。親指標の見立てどおり、新規出店費用が嵩み営業効率が失速し、生産効率が悪化し(期末従業員数で割るため、期中から計上される売上高等は少ない)、資産効率は悪化し(資産の増加に売上増加が遅れる)、流動性が赤信号(お金をいっぱい使い)、安全性が悪化(総資産が膨らむ)しているから、『規模の拡大を志向している会社』なのです。
これを支えるのは「儲かる商品を売る(売上高総利益率が高い)」体制に他なりません。
まとめ
コーナン商事は、企業力総合評価、親指標からは、ぱっと見、良い会社に見えないかもしれません。しかし、それらから『規模の拡大を志向している会社』を読み取り、何を支えとしているかを読むと、「儲かる商品を売る」という商人としての当たり前の努力を日本一していることに気付きます。
SPLENDID21NEWS第108号【2014年11月15日発行】をA3用紙でご覧いただきたい方は下記をクリックしてください。